DigKnow株式会社は、大日本印刷株式会社(以下、DNP)の新規事業開発プログラム「OneABスタジオ」から生まれた会社です。同社は、出向起業型カーブアウトの仕組みを活用し、社員はDNPに在籍したまま自己資本を投じて起業しながらVCや投資家から資金を調達して独立経営に挑んでいます。
CINCAは、OneABスタジオにて事業アイデアの創出からPoC検証まで伴走支援を実施しました。今回は、DigKnow CEOの伊藤 悠一さん、COO/CFOの川井 郷史さんに、起業に至るまでの苦労やCINCAの伴走支援に対する感想、今後の展望などについて伺いました。

技術ドキュメントの更新課題をもとに、アイデアを着想
──まずは御社が開発している、AIによる技術ドキュメント自動生成サービス「Codeledge」について簡単に教えてください。
「Codeledge」は、AIがソースコードの変更を検知し、技術ドキュメントを自動生成・更新するサービスです。属人的になりやすいシステム開発にかかるコードや仕様の把握コストを削減し、スピーディーな開発と高い品質の両立を支援しています。
──どのようにして本事業アイデアを考えられたのでしょうか。
ITエンジニアとして、これまで様々なプロジェクトに携わってきました。その中で、システム開発が先行してしまい、「ドキュメントが更新されていない」「途中で人が入れ替わって、引き継ぎ時にドキュメントが残っていない」などの経験が多くありました。
これまでは解決することが難しかった課題でしたが、AIの台頭によって変えられるのではないかと思いました。そこで現在私たちが提供するサービスの原型となる、ソースコードをもとにフローチャートを生成するサービスを思いつきました。
──出向起業型カーブアウトを実現するまでに、様々な検証を重ねていきました。これまでにぶつかった壁や課題はありましたか?
最も苦労したのは、メンバー集めでした。現在は、CEOの私とCOO/CFOの川井、CTOの桑原の3名体制となっていますが、PoCフェーズまではなかなかメンバーが整わず、私一人で対応しなければいけない場面が多くありました。
また、私たちが取り組んでいる事業領域は市場環境の変化が非常に早いです。誰よりも早く私たちのサービスをお客様のもとにお届けすることは、今後の重要な取り組みの一つとして捉えています。
出向起業型カーブアウトは新しい取り組みであるため、正解がないことに一番苦労しました。適切な相談相手がいないことはもちろん、VCをはじめとした様々な方からご意見をいただく中で、自分たちが目指すべき方向性がぶれてしまったこともあります。伊藤と腰を据えて対話する中で自分たちが何を求めているかが明確になったことが、一つのブレイクスルーだったと感じています。

「出向起業型カーブアウト」で、ゴールが明確になった
──大企業からいきなりベンチャー企業の一員となる中で、ギャップも多々あったのではないかと想像します。
そうですね。資金調達一つとっても、大きな学びでした。大企業の中で新規事業を立ち上げる場合は、市場の大きさや売上の見込みなど具体的な数値を見せることが求められます。一方で、VCとの対話では「なぜ、あなたがこれをやるのか」という意思や熱量について聞かれることが多かったです。はじめの頃は、伝え方に苦戦しましたね。
大企業であれば、豊富な人材を必要なだけアサインすることもプロジェクトによっては可能ですが、ベンチャー企業となるとそうもいきません。資金も時間も有限だからこそ、このメンバーが、どういった役割を担っていくかなど、真剣に考えるきっかけになりました。
たしかに、事業を加速させるために人材を増やしたい一方で、資金は限られているので、最低限のメンバーで創業期を乗り越えていかなければいけないですよね。そのあたりの苦労は、大企業の中では経験できないことかもしれませんね。
おっしゃるとおりです。私が立案した事業計画書も、今では全く異なる内容になっています。
また、意思決定一つとっても、スピーディーに決断していく必要があります。開発まわりは伊藤を信頼し、営業については私が積極的にリードするなど、お互いの経験を活かしていくことが大事だと感じています。
──今回、事業アイデアの創出フェーズからPoCまでご支援させていただきましたが、改めて社内起業プログラムに参加されて、いかがでしたか?
一番良かったと感じているのは、社員が会社に在籍したまま社外の資本を得て起業できる「出向起業型カーブアウト」の仕組みが用意されていたことです。
過去にも、新規事業創出プログラムが何度か開催されていたのですが、いずれもアイデア創出でとどまってしまい、事業化には至らないケースがほとんどでした。
今回、出向起業型カーブアウトという明確な出口が提示されていたことで、自分事として捉えられるようになりました。社内の一事業といった建付けではないからこそ、事業を成功させるためにどうすればいいか、どのような意思決定をすべきか、といったことを真剣に考えられたと感じています。
私も過去に新規事業創出を目的としたプログラムに参加したことはあったのですが、今回は明確にプロセスが異なると初めから感じていました。実践的で、事業アイデア出しから新規事業の創出までフローが明確になっている。かつ、事業検証一つひとつに明確な基準があり、今まで新規事業創出に携わっていない方でも新規事業を生み出すことは可能なのだと感じました。「新規事業創出に型はない」と思っていたのですが、CINCAさんのご支援を通して型があると気づけたことは大きな学びでした。
そう言っていただけると嬉しいですね。伴走支援の中で、印象に残っていることはありますか?
様々な手法を学びましたが、特に印象に残っているのは、「アイデアは相手が知らなくて、自分が知っているところから着想する」という考え方です。実際に、今回のプログラムでは、自分の経験や知識をもとにした事業アイデアが高く評価されました。自分の興味関心や取り組んできた仕事などがアイデア出しにおいて強みに変わることを実感しましたね。もちろん、それだけで簡単に事業が立ち上がるわけではありませんが、色々な知見の共有とともに伴走いただいたCINCAさんのプログラムは、本当に心強いと感じました。

「Codeledge」を広め、新たな開発体験を届けたい
──今後の展望についてお聞かせください。
システム開発の未来を想像すると、AIがソースコードを書いたり、人が書くソースコードをAIが補助したりと、AI自らがシステムを実装していく可能性が高いと思います。その一方で、できあがったソースコードの中身は、人が理解し、品質を担保する必要があります。
私たちはソースコードをもとにわかりやすい仕様書を作成し、将来的にはエンジニアにとどまらず、システム開発に関わるすべての人に利用いただけるサービスにしていきたいです。
「Codeledge」を使ってみたい方、ご興味ある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
出向起業型カーブアウトを通じた会社設立は、DNP内では私たちが初めての取り組みです。「Codeledge」を世の中に広めていくことはもちろん、私にはもう一つ夢があります。それは、私たちと同じように、大企業の中から新規事業の創出にチャレンジしたい方をサポートしていくことです。私自身、大企業の一社員から、一人の経営者として世の中にイノベーションを起こしていく立場に変わるという経験をしました。新しいことへのチャレンジは、リスクが大きくなればなるほど足踏みしたくなりますが、たとえ失敗したとしても自分の経験値につながると思います。私たちが得た知見を共有し、ゆくゆくは新規事業が次々と生まれる土壌を育て、日本全体にイノベーションを起こすきっかけを作れたら嬉しいです。
──最後に、どんな企業がCINCAに合うと思いますか?
事業アイデアをたくさん生み出せる土壌がある企業です。CINCAさんから「アイデア出しは多産多死があたりまえ」というお話があったとおり、Oneabスタジオ全体では600件のアイデアを出しました。プログラムが進行する過程で、事業アイデアはどんどん絞り込まれていくので、まずアイデアをたくさん出せる人がいることが一番大事だと感じています。
新しいことにチャレンジしたり、新しい場所に飛び込んだりできる人です。世の中の移り変わりが激しく、正解が見えない中で、ときには恐れを抱くことがあるかもしれません。その中でも、勇気を持って、失敗を恐れず、自分が信じた道を正解にしていける方が向いていると思います。様々な制度を活用しながら、チャレンジしていける人材のいる企業は特に相性が良いと思います。
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※本記事は、2025年11月時点の内容となります。