株式会社NTTドコモは日本を代表する通信事業の企業です。
通信事業の傍らで、「社会的インパクトをもたらす新規事業をスピード感をもって創出する」をテーマにしたdocomo STARTUP CHALLENGEというプログラムを実施しています。
持続的に様々な領域で新規事業の立ち上げを行う中で、今回は「アイディエーションから始め、多くの案を並行して検討し、事業化までつなげたい」というご相談を頂きました。
結果的にご支援を通して検証してきた生成AIを活用した学習マンガ事業「LearningToon」が2024年4月1日にドコモからスピンアウト。
2023年にCINCAとお取引いただき、どのようなところに魅力を感じ、どのような結果が生まれたのか、本プロジェクトに関わった、木本 東賢さんにお話を伺いました。
不確実な領域の中でも事業を作りたい
──まずは、新規事業の検討を開始した背景を教えてください
経緯としては、全社的に子ども向けの新規事業を創っていこうとする流れがありました。大企業的な事業の立ち上げに加えて、リーン・スタートアップをベースとした新規事業開発も同時にできないか、と考えて新規事業開発部でプロジェクトチームを立ち上げたのが発端です。
ただ、若年層に向けての事業アイデアを持っている訳でもなかったので、アイディエーションから含めた進め方に課題を感じていました。
今回のようなスタートアップ的で不確実な領域でも、確度高く事業を作りたいという思いがあり、CINCAに依頼をしました。
過去の経験からスピード感が課題だった
──過去にはどんな事業を考えていたんですか?
研修の延長で、飲食業の店長をスキルアップすれば転職できるんじゃないか、という発想から、人材の育成・マッチングみたいな事業を考えてました。
その時に阿部さんにアイデアを壁打ちしてもらって、「こういう風に切り替えたら需要はありますね」というアドバイスはいただいていました。
そのアドバイスをもらっていたタイミングで既に合計6ヶ月くらい検証を進めていたのですが、PSFで上手く行かず。
300回くらいインタビューしたり、飲食店の店長たちに毎週パソコンを教えたりとか色々やったんですよ。ただスキルを習得するには時間がかかりますし、もっと効率の良いやり方が合ったはずで。とにかく時間がかかるのがしんどかったですね…。後から振り返ると、もっと効率的にできる要素がかなりの部分であったと分かり、検証方法のブラッシュアップが必要だと痛感しました。
──つまりCINCAに依頼をした決め手はスピード感ですか?
そうですね。僕自身が経験したところもあって、やっぱりいかに最短で仮説を検証できるかと、早く失敗できるかが一番重要だったかな。
──逆に、依頼するときに懸念されたことはあるんですか?
あの…会社のサイトがあやしくってですね…。
あれっこの会社、本当に大丈夫かな?っていうのは感じました(笑)
あの真っ白いやつか(笑)
…言い訳すると、あれもMVPということにしましょう。
逆に言うと、それ以外は全く無かったですね。すべてを委ねようくらいの気持ちでいましたよ。
アイデア出しから2ヶ月で事業化の方向性が見えた
──CINCAへの依頼はどこから開始でしたっけ
最初はアイデア出しのところからですね。海外のスタートアップの事例を参考に2つのアイデアまで絞りました。1つ目が子ども向けニュースの事業で、2つ目がSNSの事業だったかな。でもどっちのアイデアも検証してみたら全然刺さらなくて。
インタビューの中で「学習マンガのサバイバルを読んでいる」というインサイトが得られたので、学習漫画が良いんじゃないかという発想になりました。すぐにマーケットリサーチを進め、ピッチデックのフォーマットに沿って事業構想練っていくと、事業案として魅力のあるものになりました。学習マンガって意外と売れていることがわかったんですよね。それならやってみよう!と、予算取りから顧客検証まで進めました。
──漫画事業のときは顧客検証のフェーズからでしたよね
そうです。LPの制作、広告での効果検証から入っていただきました。一応学生や子供向けというベースはあったので、子供がいる親向けと、社会人向けの2つに絞って検証しました。
ここでも一緒に検証する中で、リベラルアーツ的にやったほうが良いんじゃないというご提案もいただいた結果4つのセグメントで検証する方向になって。
そのセグメントのうち一つのCPAが1,700円くらいに着地しそうになって、たった2ヶ月だけど収益性から見ても事業の可能性が見えてきました。
異常な検証数とスピードという社内からの評価
──ドコモ社内からはどんな評価だったんですか?
当時の僕が本業の方で持っていたのがビジネスコンテストの運営で、さらにもう一つコンテストを追加して、そこにさらにマンガとSNSの事業2つを検証してたんですよ。途中からは森林カーボンクレジットの検証を追加したり、docomo STARTUPのリブランディング・制度設計をやったり。
色々と抱えすぎている状態でCINCAさんと3つのアイデアまで検証していたので、社内からはアイツいったい何やってるんだろうみたいな、すごいを通り越して変な目で見られてましたね(笑)
発足から約1年で事業が子会社化
- 2022年10月:子供向け事業のアイデア検証からスタート
- 2023年1月:子ども向けSNS事業と、検証の中で生まれたアイデアの漫画事業の2つでPSF検証を開始
- 2023年6月:漫画をAIで作るためのSPF〜MVP検証を開始
- 2023年11月:MVP検証が完了
- 2023年12月:リードVCの出資内諾
- 2024年4月:社会人向けAI学習漫画サービスとしてスピンアウト
──プロジェクトを振り返ってみた感想はいかがでしょうか?
めちゃくちゃいろんなことやりましたけど、やっぱりSPFでAIを使ったオペレーションを組むのにコストを使いましたよね。
AIで漫画を作ろうと考えるのは簡単でしたけど、やっぱりめちゃくちゃ奥が深かったですね。ここらへんはちょっと僕らも知見がないのもあって、すごいいいパフォーマンス出したかっていうと、結構微妙なところもあって、本当に手探りでしたね。
おまけに技術が週単位の速さで変わっていくという。課題が多すぎて、毎週もうやめようって思ってました(笑)
それでも1年半でここまでこれたかぁと思うと、感じるものがありますね。
CINCAさんは本気で向き合って、一緒に汗をかいてくれる
──最後に質問なのですが、木本さんからみてどんな会社がCINCAに合うと思いますか?
自分たちがやりたいことを100%その通りにやってほしいなら、違う会社にお願いしたほうが良いと思います。だけど本当に成功する事業を作りたいなら、CINCAさんとアイデアを検証して、捨てて、良いものに絞り込む過程から一緒にやったほうがいいですね。
こちらもそれなりのコミット量も求められるので、その気がないならやめといたほうがいいなとも正直思ったりします。アイデア出しから検証まで全部やってもらえるのも魅力だと思うんですけど、検証してもらったものを渡されてもその続きができる人ってなかなかいないので。
事業構築の段階で全く知見がなかったAI領域の検証に対しても、めちゃめちゃコミットしてくれていたのが嬉しかったですね。僕自身も答えがなくて、不確実性の高い領域のなかで、答えを模索し続ける姿勢といいますか。諦めずにチームとして一緒にやりきれたのがありがたかったです。